役員社宅の「小規模な住宅」とは?99㎡・132㎡の床面積基準と判定方法

役員社宅にする物件を探していると、多くの場合「99㎡」「132㎡」という数字に行き当たります。税務上の「小規模な住宅」に当たるかどうかの線引きです。
役員が会社に払う家賃の下限(賃貸料相当額)は、この線の内側か外側かで計算方法が変わります。内側なら低く抑えやすく、外側だと、借り上げの場合は「会社が家主に支払う家賃の50%」との比較が入ります。同じ家賃の物件でも、役員の負担額の下限は変わります。
この記事では、99㎡と132㎡の使い分け、マンションで見落としやすい共用部分の扱い、上限側の線引きである「豪華社宅」までを、物件を決める前に自分で当たりをつけられる形で整理します。最終的な判定は顧問税理士に確認する前提です。
「小規模な住宅」とは?なぜ判定が重要か

役員社宅では、役員が会社に支払う家賃が「賃貸料相当額」を下回ると、差額が給与として課税されます。この賃貸料相当額の計算方法は、物件が「小規模な住宅」かどうかで変わります。
- 小規模な住宅に該当する場合:固定資産税の課税標準額と床面積をもとにした3つの算式の合計で計算します。実際の家賃と比べてかなり低い水準になるケースが多い計算方法です
- 小規模な住宅に該当しない場合:別の計算になり、役員の自己負担の下限は上がります(詳しくは第4章)
つまり、小規模な住宅に該当するかどうかで、役員の自己負担の下限の目安が大きく変わります。具体的な計算式と数字の例は賃貸料相当額の計算式と具体例で解説していますので、本記事では「判定」に絞って見ていきます。
ポイント
「小規模かどうか」は家賃の金額ではなく、建物の法定耐用年数と床面積で判定します。物件選定の段階でこの2つを確認しておくことが、役員社宅の効果を左右します。
判定基準:法定耐用年数と床面積(99㎡・132㎡)

小規模な住宅の判定基準は、建物の法定耐用年数によって床面積の上限が変わる二段構えです(出典: 国税庁 No.2600)(出典: 所基通36-40・36-41)。
| 建物の法定耐用年数 | 床面積の基準 | 主な構造の目安 |
|---|---|---|
| 30年以下 | 132㎡以下なら小規模な住宅 | 木造、軽量鉄骨造など |
| 30年超 | 99㎡以下なら小規模な住宅 | 鉄筋コンクリート造(RC)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)、厚い鋼材の鉄骨造など |
法定耐用年数は建物の構造で決まります。都市部の分譲賃貸マンションに多いRC造・SRC造は30年超に当たるため、基準は99㎡以下です。単身〜ファミリー向けの一般的な間取りであれば基準内に収まることが多い一方、広めの物件では次に述べる共用部分の按分で基準を超えることもあります。構造は登記情報や物件の募集図面で確認できますが、耐用年数の判定を含めた最終確認は顧問税理士に依頼するのが安心です。
マンションは「専有面積」だけで判断しない(共用部分の按分)

見落としやすいのが、区分所有のマンションの床面積の数え方です。判定に使う床面積は専有部分だけではなく、廊下やエントランスなどの共用部分の床面積を按分して(=各住戸に割り振って)専有部分に加えた面積で判定します(出典: 国税庁 質疑応答事例「役員に貸与したマンションの共用部分の取扱い」)。
- 募集図面の「専有面積90㎡」という表記だけを見て99㎡以下と判断すると、共用部分を加えた結果、基準を超えてしまうことがあります
- 基準の少し内側に収まる物件を選ぶか、按分後の面積を事前に確認しておくと、導入後に想定が崩れるリスクを減らせます
注意
専有面積が基準ぎりぎりの物件は、按分後に基準を超える可能性があります。90㎡台後半のRC造マンションを検討する際は、契約前に按分後の面積確認を挟むことをおすすめします。
判定の通し方(仕組みを理解するための仮の数値)
- RC造マンション(法定耐用年数30年超)→ 基準は99㎡
- 対象住戸の専有面積 90㎡ / 建物全体の専有面積の合計 3,000㎡ / 共用部分の床面積 600㎡
按分される共用部分 = 600㎡ ×(90㎡ ÷ 3,000㎡)= 18㎡
判定に使う床面積 = 90㎡ + 18㎡ = 108㎡ → 99㎡を超えるため、小規模な住宅には該当しません
専有面積だけを見ると「90㎡=基準内」に見える点が落とし穴です。上記は仮の数値で、按分の割合や共用部分の面積は物件ごとに異なります。管理規約や登記事項証明書の面積、管理会社への照会で確認し、判定の最終確認は顧問税理士にご相談ください。
小規模に該当しない場合と「豪華社宅」

床面積が基準を超えても、役員社宅にできないわけではありません。ただし賃貸料相当額の計算が変わります。
- 小規模でない社宅(借り上げの場合):所定の算式で計算した額と「会社が支払う家賃の50%」を比べて、多いほうが賃貸料相当額になります。自己負担の下限が実質的に家賃の半分程度まで上がるため、小規模な住宅と比べて手取りへの効果は小さくなります
- 豪華社宅:床面積240㎡超で取得価額・支払賃貸料の額・内外装などを総合的に勘案して判定されるほか、240㎡以下でもプールなど役員個人の嗜好を強く反映した設備がある場合は該当し得ます。豪華社宅と判定されると賃貸料相当額の算式は使えず、通常支払うべき家賃(時価)が基準になるため、社宅としてのメリットはほぼなくなります
よくある誤解:「50%以上負担していれば課税されない」
「賃貸料相当額の50%以上を負担していれば給与として課税されない」という取り扱いは、使用人(従業員)に社宅を貸す場合のものです(出典: 国税庁 No.2597)。役員にはこの基準はなく、賃貸料相当額に満たない部分が給与として扱われます。本記事でいう「50%」は、小規模でない借り上げ社宅で「会社が家主に支払う家賃の50%」と比較するという、別の基準です。
「どこまでの物件なら効果が見込めるか」は、家賃・構造・面積の組み合わせで決まります。物件条件と制度全体の関係は役員社宅のメリット・デメリットもあわせてご覧ください。
物件選びで押さえたい実務ポイント

判定の考え方を、物件を見つけたときの確認順に並べ直すと次のようになります。
- ① 構造を見る:木造・軽量鉄骨造なら132㎡、RC造・SRC造なら99㎡が基準です(→ 第2章)
- ② 専有面積が基準の何㎡手前かを見る:共用部分を足しても基準内に収まるかを確かめます(→ 第3章)
- ③ 課税標準額を、誰がいつ取るか決める:賃貸料相当額の計算には建物・敷地の固定資産税課税標準額が必要です。借り上げ物件では、貸主(所有者)から固定資産税評価証明書を提供してもらうか、借主の立場で固定資産課税台帳の閲覧や証明書の交付を請求する形になり、取得に手間がかかります。具体的な調べ方はマンションの固定資産税評価額・課税標準額の調べ方にまとめていますので、物件を決める前に段取りを決めておくと止まりません
トラストワンでは、こうした判定を織り込んだ物件選定から法人名義での契約、賃貸料相当額を織り込んだ家賃資料の作成までを一括で引き受けています。大阪での進め方は役員社宅の導入代行(大阪)にまとめています。
よくある質問

99㎡と132㎡、どちらの基準で見ればよいか分かりません。
建物の法定耐用年数で決まります。木造・軽量鉄骨造など耐用年数30年以下の建物は132㎡以下、RC造・SRC造など30年超の建物は99㎡以下が基準です。構造は登記情報などで確認できますが、判定の最終確認は顧問税理士にご相談ください。
床面積が基準を少し超えていたら、役員社宅にする意味はありませんか?
小規模な住宅に該当しなくても役員社宅自体は可能です。ただし借り上げの場合は「会社が支払う家賃の50%」との比較が入るため、効果は小さくなります。物件を変える選択肢も含めて、条件ごとの比較で判断するのがおすすめです。
タワーマンションの高層階でも小規模な住宅になりますか?
判定は床面積と法定耐用年数で行うため、階数や眺望そのものは基準に含まれません。一方で、内外装や設備が著しく豪華な場合は豪華社宅と判定される可能性があります。個別のケースは税理士等の専門家にご確認ください。
自社所有の社宅でも、99㎡・132㎡の基準は同じですか?
小規模な住宅かどうかの基準(法定耐用年数と床面積)は、自社所有でも借り上げでも同じです。異なるのは小規模に該当しない場合の計算で、「会社が家主に支払う家賃の50%」との比較が入るのは借り上げの場合だけです。自社所有の場合の計算は顧問税理士にご確認ください。
基準を超えないように、なるべく狭い物件を選べばよいのですか?
面積だけで決めるのはおすすめしません。役員社宅の効果は家賃・構造・面積の組み合わせで決まり、基準内でも家賃や課税標準額によって負担額は変わります。住み心地や通勤動線を含めて候補を複数出し、条件ごとに比較して判断するのが現実的です。
まとめ

「小規模な住宅」の判定は、法定耐用年数30年以下なら床面積132㎡以下、30年超なら99㎡以下という二段構えで、マンションでは共用部分の按分を加えた面積で判定します。この基準に収まるかどうかで賃貸料相当額の計算方法が変わり、役員社宅の効果が大きく変わります。
物件選定の段階から判定を織り込んでおけば、導入後に「思ったより効果がなかった」という事態を避けられます。トラストワンは、基準を踏まえた物件選定から契約・資料作成までをワンストップで支援します。詳しくは事業内容ページをご覧ください。
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根拠となる通達(出典リンク)
「小規模な住宅」の判定は、所得税基本通達 36-40・36-41(役員に貸与した住宅等に係る通常の賃貸料の額の計算と、小規模住宅等の判定)に基づいています。詳細は国税庁のタックスアンサー「No.2600 役員に社宅などを貸したとき」でも確認できます。数値や取り扱いは改正される場合があるため、適用時点の情報を確認してください。本記事は、これらの国税庁ページの記載を確認したうえで作成しています。
免責事項
本記事は役員社宅制度に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を示すものではありません。実際の適用にあたっては、最新の法令・通達を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。