役員社宅の賃貸料相当額とは?計算式と具体例でわかりやすく解説
役員社宅を導入するとき、多くの経営者が最初につまずくのが「役員は家賃をいくら負担すればいいのか」という点です。この負担額の基準になるのが【賃貸料相当額】です。
本記事では、国税庁が定める賃貸料相当額の計算式を、3つの要素と具体的な数字の例に分けて解説します。従業員向けの一般的な社宅ではなく、役員社宅に絞って整理しているのが特徴です。税務上の最終的な判断はご契約の税理士に確認いただく前提で、まずは仕組みを自分で把握できる状態を目指します。
役員社宅制度そのものの仕組み(メリット・デメリット・導入の流れ)は、役員社宅制度とは?仕組み・メリット・導入の流れで解説しています。
役員社宅の賃貸料相当額とは(家賃負担の基本)
役員社宅とは、法人が借りた(または所有する)住宅を、その会社の役員に社宅として貸す仕組みです。このとき、役員が会社に払う家賃が一定額を下回ると、その差額が【給与】とみなされて所得税・住民税の課税対象になります(出典: 国税庁 No.2600)。この「一定額」が賃貸料相当額です。
言い換えると、賃貸料相当額は「役員が最低限これだけは自己負担すべき」という下限の家賃です。役員がこの金額以上を負担していれば、給与としての課税は生じません。逆に、会社が役員へ無償で貸したり、賃貸料相当額より低い家賃しか受け取っていない場合は、その差額が給与課税されます(国税庁タックスアンサー No.2600)。
ポイント
賃貸料相当額は「実際の家賃(会社が家主に払う金額)」とは別物です。多くのケースで、賃貸料相当額は実際の家賃よりかなり低くなります。この差が、役員社宅が経営者に利用される背景になっています。
賃貸料相当額の計算式(3つの要素)
役員社宅のうち、後述する「小規模な住宅」に当てはまる場合、1か月あたりの賃貸料相当額は次の3つを合計して求めます(出典: 国税庁 No.2600)(出典: 所基通36-40・36-41)。役員社宅の多くはこの小規模な住宅に該当します。
小規模な住宅の賃貸料相当額(1か月あたり)
賃貸料相当額 = 1 + 2 + 3
ここで使う「固定資産税の課税標準額」は、物件の時価や実際の家賃ではなく、市区町村が固定資産税を計算するために定めている評価上の金額です。建物と敷地(土地)それぞれに設定されており、固定資産税の課税明細書や、市区町村で取得できる固定資産評価証明書で確認できます。
借り上げ(賃貸物件)の場合の実務
会社が家主から借りている物件を役員社宅にする場合、課税標準額は借主側の手元にはありません。物件の所有者(家主・オーナー)や管理会社を通じて確認する、あるいは物件所在地の市区町村で手続きする必要があります。ここが役員社宅導入の実務でつまずきやすい箇所です。
まず「小規模な住宅かどうか」を判定する
賃貸料相当額の計算式は、その住宅が【小規模な住宅】に当たるかどうかで変わります。判定は、建物の法定耐用年数と床面積の組み合わせで行います。
- 法定耐用年数が 30年以下 の建物 … 床面積が 132㎡以下 なら小規模な住宅
- 法定耐用年数が 30年を超える 建物 … 床面積が 99㎡以下 なら小規模な住宅
法定耐用年数
30年以下(木造など)
132
㎡以下なら小規模
例:木造アパート
耐用年数 22年
法定耐用年数
30年超(RC造など)
99
㎡以下なら小規模
例:RC造マンション
耐用年数 47年
法定耐用年数は建物の構造で決まります。おおまかな目安として、木造は22年(30年以下)、鉄筋コンクリート造(RC造)は47年(30年超)です。つまり、木造なら132㎡以下、RC造のマンションなら99㎡以下が小規模な住宅の判定ラインになります(出典: 所基通36-40・36-41)。区分所有マンションの場合は、専有部分に加えて共用部分の床面積を按分して床面積に含めて判定します。
なぜ判定が重要か
小規模な住宅に該当すると、前章の3要素の式が使え、賃貸料相当額は比較的低くなります。該当しない場合は次章の別計算になり、金額も変わります。都市部の役員社宅は、床面積を抑えたRC造マンションを選ぶことで小規模な住宅の範囲に収まるケースが多くみられます。
具体例で賃貸料相当額を計算してみる
実際に数字を当てはめてみます。以下は仕組みを理解するための仮の数値です。正確な計算には、対象物件の実際の固定資産税課税標準額が必要になります。役員が自分ひとりの会社で導入するイメージは、一人社長の役員社宅でも具体的に紹介しています。
前提(仮の設定)
・大阪市内のRC造マンション(法定耐用年数47年=30年超)
・専有床面積 60㎡(共用部分按分を含めても99㎡以下 → 小規模な住宅に該当)
・建物の固定資産税課税標準額 500万円/敷地の固定資産税課税標準額 1,000万円
・会社が家主に支払う実際の家賃 15万円/月
この物件の賃貸料相当額(1か月あたり)
賃貸料相当額 ≒ 32,218円/月
賃貸料相当額32,218円の内訳。この例では敷地の課税標準額が占める割合が大きい。
この例では、役員が毎月およそ32,218円以上を会社に負担していれば、給与としての課税は生じません。会社は家主に15万円を払っていますが、役員の負担は約3.2万円で足りる計算です。実際の家賃と賃貸料相当額のあいだにこれだけの差が生まれる点が、役員社宅の特徴です。この差がなぜ生まれ、どのような点に留意すべきかは、役員社宅のメリット・デメリットで整理しています。
注意
上記はあくまで仮の課税標準額に基づく試算です。課税標準額は物件ごとに異なるため、同じ家賃15万円の物件でも賃貸料相当額は変わります。また、共益費や敷金・礼金は賃貸料相当額の計算には含めません。実際の金額は、対象物件の評価額を確認したうえで顧問税理士にご確認ください。
小規模でない住宅・豪華社宅の注意点
床面積が小規模な住宅の基準を超える場合、計算方法が変わります。自社所有か借り上げかで次のように分かれます。
- 自社所有の場合:(建物の課税標準額 × 12%〔法定耐用年数が30年を超える場合は10%〕+ 敷地の課税標準額 × 6%)を12分の1にした金額
- 借り上げ(賃貸)の場合:会社が家主に支払う家賃の50%と、上記の自社所有として計算した金額を比べ、いずれか多いほうの金額
さらに、床面積が240㎡を超えるような物件は【豪華社宅】に該当することがあります(出典: 国税庁 No.2600)。豪華社宅と判定されると、これまでの算式は使えず、通常支払うべき使用料に相当する額(=一般的な相場の家賃)が賃貸料相当額になります。床面積が240㎡以下でも、プールなど特別な設備がある物件は豪華社宅とされる場合があります。
根拠となる通達(出典リンク)
役員社宅の賃貸料相当額の考え方は、所得税基本通達 36-40・36-41(役員に貸与した住宅等の通常の賃貸料の額の計算と、小規模住宅等の判定)、および法人税基本通達 9-2-9(6) に基づいています。詳細は国税庁のタックスアンサー「No.2600 役員に社宅などを貸したとき」でも確認できます。数値や取り扱いは改正される場合があるため、適用時点の情報を確認してください。
役員社宅の賃貸料相当額に関するよくある質問
役員は家賃を全額自己負担しないといけませんか?
いいえ。賃貸料相当額【以上】を負担していれば、給与課税は生じません。実際の家賃を全額負担する必要はありません。ただし、会社が無償で貸したり、賃貸料相当額より低い額しか受け取っていない場合は、その差額が給与として課税されます。徴収不足など否認されやすいケースは役員社宅が否認される5つのケース、会社の経費にできる範囲は役員社宅の経費はどこまで?で解説しています。
共益費や敷金・礼金は計算に含めますか?
賃貸料相当額の計算式(3要素)には、共益費や敷金・礼金は含めません。計算に使うのは建物と敷地の固定資産税課税標準額と床面積です。共益費の負担をどうするかは、社宅規程や契約でどう定めるかの実務上の論点になります。
固定資産税の課税標準額はどこで確認できますか?
物件所有者に届く固定資産税の課税明細書、または市区町村で取得する固定資産公課証明書で確認できます。借り上げ物件を役員社宅にする場合は、所有者(家主)や管理会社を通じた確認が必要です。ここが役員社宅導入の実務で手間のかかる部分で、具体的な調べ方はマンションの固定資産税課税標準額の調べ方で解説しています。
従業員社宅と役員社宅で計算は同じですか?
計算式の考え方は近いですが、役員社宅は判定や取り扱いが厳密に見られる傾向があり、豪華社宅の規定など役員特有の論点もあります。世の中に出回る社宅規程のひな形は従業員向けが中心のため、役員社宅ではそのまま流用できない点に注意が必要です。導入準備で使える役員社宅規程のひな形(無料ダウンロード)もご用意しています。
まとめ|計算は仕組み、判断は税理士に
役員社宅の賃貸料相当額は、(1)建物課税標準額×0.2%、(2)12円×床面積÷3.3、(3)敷地課税標準額×0.22%、の合計で求めます。まず小規模な住宅に当たるかを床面積と法定耐用年数で判定し、当てはまればこの式が使えます。実際の家賃より賃貸料相当額がかなり低くなることが多く、役員の自己負担はその金額以上あれば給与課税は生じません。
ただし、正確な金額は物件ごとの課税標準額が必要で、借り上げ物件では評価額の確認に手間がかかります。最終的な税務判断はご契約の税理士に確認することが前提です。トラストワンは、この課税標準額の確認を含む物件選定から、法人名義での契約、賃貸料相当額を織り込んだ資料の作成までを、経営者に代わって引き受けています。役員社宅の導入をご検討の際は、事業内容ページもあわせてご覧ください。
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免責事項
本記事は役員社宅制度に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を示すものではありません。実際の適用にあたっては、最新の法令・通達を確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。